いろいろな使われ方をするワード「卒業式」。今も増え続けている造語について取り上げてみた

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意外と難しい「卒業式」の定義

こんな見出しをつけたら、「卒業式は卒業式に決まっているだろ!」とたちまちツッコミの嵐になるかも。でも、現代の「卒業式」にはいろいろな意味があって、いろいろな場面で使われるよね?

昔は使われていなかったけど現代では普通に使われている意味とか、関連する造語なんかもあるから、「卒業式=学校を卒業する時に行われる式」という一般的な説明だけでは十分にカバーできないんだよね。

というか、この一般的な使い方だけではつまらないんで、いろいろな使い方ができたほうが表現のバリエーションが広がっていいんじゃないかな。

なぜ学校を「卒業する」と言うのか?

この学校でやるべきことをすべてやった、という意味

卒業式とはそのための儀式・イベントなわけで、この基本的な部分がわかっていないと始まらないよね。簡単に言えば、「学校の過程を無事修了して、次のステップに進む段階に来たよ」という意味。言い換えれば、「この学校でやるべきことは全部やったよ」ということ。

だから、課程をすべて修了していないと(=単位をとれていないと)卒業できない。例えば、高校生活は普通3年間だけど、決められた課程をしっかり終了していないと、3年では卒業できないわけ。大学にたとえればもっとわかりやすいよね。

5年目の3年生とか、8年在籍したけど卒業できなかったとか、聞くでしょう?つまり、卒業式とは卒業できる段階に到達した人が参加できるイベント。学校がメインになるわけだけど、他にもいろいろな場面でも使える。

学校以外で使える「卒業」

「卒業式が別れの舞台であると同時に、門出の機会でもある」なんて言われるのもそのためなんだよね。
現在では、この「やるべきことはやり終えた」という基本的な卒業の意味を広い意味で使う機会が増えているよね。

卒業式は造語。正式名称は「卒業証書授与式」、「学位授与式」

ちなみに、「卒業式」という言葉そのものが略称であって、教育課程をすべて修了したことを表す式典のことを、正式には「卒業証書授与式」、大学院なら「学位授与式」と言うんだよ。「卒業式」そのものが、簡単に表現するために作られた造語としての面を持っているわけね。

卒業非参入単位

あと、大学生にとってちょっと気になる卒業の関連用語として、「卒業非参入単位」も挙げておこうかな。これは「単位をとっても卒業の役に立たない単位」のこと。「とってもいいけど、いくらとっても卒業できるわけではない単位」だよ。

本来の卒業とは、あくまで「あらかじめ決められた教育課程を修了すること」が条件なわけ。この点は、後述する造語としての使い方ともかかわってくるから覚えておいてね。

「卒業式」にはいろいろな使い方もあるよ!

アイドルグループの「卒業」

卒業式を本来の意味とは違った形で、卒業や卒業式といった言葉を使わない分野で、新しい造語の形で使われることが多く見られるようになったよね。おそらく、そのきっかけはアイドルグループで「卒業」という言葉がよく使われるようになったことじゃないかな。

普通、バンドやグループからメンバーが抜けるときには「脱退」が使われるはず。しかし、みなさんもご存知のとおり、現在のアイドルグループではもっぱら「卒業」が使われるよね。

「脱退」だと、どうしても抜けるメンバーが不満を覚えて辞めるとか、他のメンバーから追い出されてしまうとか、ネガティブなイメージが付きまとうわけなんだけど、「卒業」の場合はそういった面がほとんどない。

それこそ「より自分を成長させるために別の世界に旅立つことにした」とか、「自分をより厳しい環境に置くために一人でやっていくことにした」といった、ポジティブな意味が強くなるよね。

辞めるの代わりに使う卒業

「辞める」または「辞めさせられる」に代わる新しい造語として、「卒業」という言葉を最初に考えた人は、ずいぶんとうまい表現を作ったもんだなと感心しますね。おそらく、そこには大人の事情も絡んでいるんでしょうけど。

卒業式

こうした「卒業」を新しい造語として使うようになったことで、「卒業式」の言葉もかなり広い意味で使われるようになってきたよね。典型的なのは、アイドルグループから「卒業」するメンバーの最後のライブ・イベントのことを「卒業式」なんて言い方をする例。

卒業証書が渡される、きちんと取得するべき単位を取得しているといった形で卒業できる根拠なんてどこにもないんだけど、「このライブ/イベントを最後に、この人は新しい世界に旅立ちます」という意味では、きちんと卒業式の条件に当てはまっているんじゃないかな。

脱退ライブや脱退イベントに比べて、「卒業式」という言葉にはより感傷的で、ポジティブな面が前面に出て、周りの人たちも応援したくなる気分になる、そんな気がしませんか?しかも応援したくなるのは「卒業」するアイドルだけでなく、残るメンバーに対しても同じ。

「この子がいなくなってもがんばれよ」なんて気になっちゃう。うまく考えた造語だな、としみじみ。

これまでやってたことから離れる「卒業」

こうした新しい使われ方から派生して、日常生活でもいろいろな場面で使われる機会が増えたよね。例えば、これまで熱中していたことから離れるときにも「卒業」って使うよね?

「あれ、お前ゲーム大好きじゃなかったっけ?」「いや、さすがにもう卒業したよ」みたいな。一般的には、子供っぽいと思われがちなジャンルから離れたときに使われることが多いみたい。

これまでやってたことから離れる「卒業式」

この「卒業」の使い方はかなり前から使われていたけれど、さらにこの使い方に絡んで、「卒業式」が使われる機会も増えているようで。例を挙げると、これまで大好きだったゲームから「卒業する」ために、所有していたゲーム機やゲームソフトをすべて売却する行為を指して、「俺/私にとってのゲームから卒業式」なんて言い方をするわけ。

さっきのアイドルの話で言えば、ひいきのグループから推しの子が「卒業」するのを機会に、グループのファンであることを「卒業する」ときに使われることもあるよね。つまり、その卒業するメンバーにとって「卒業式」となるライブ/イベントが、ファンにとっても卒業式になるってことね。

卒業してソロになったアイドルの人気急降下することも

アイドルグループで活躍しているときには人気があったのに、卒業してソロになったら途端に注目も人気も急下落ってケースもあるよね?これは、ファンが推しの子が卒業したのを機会に、所属グループだけでなく、その推しの子のファンも卒業してしまうケースが多いことを示しているわけ。

グループと卒業する子両方に対する、ファンとしての卒業式になってしまうわけね。

卒論

また、一時期あるタレントが不倫をした際に、離婚届のことを「卒論」と表現したことがちょっと話題になったのを覚えてるかな?
卒業/卒業式を同じような意図で、「彼との関係を卒業したわ」とか、「きっぱりと彼に別れを告げたの。あれが私たちの卒業式ね」なんて言い方をする人も出てきたよね。

いわば、男女関係の「清算」に該当する言葉の造語・隠語として、卒業や卒業式を使っていることになるんだよね。

造語として卒業式を使うときの注意点

安易に使わない

こうして見ると、卒業/卒業式って言葉は、とても便利な表現だってことがわかるよね。別の言葉と置き換えて使うことができちゃう。ただ、便利なのはいいけど、安易に使うと周囲から顰蹙を買ってしまう恐れがあるので、ちょっと注意したほうがいいかもね。

子供っぽいジャンルから離れるときに使う「卒業・卒業式」

先程ゲームの例で出したけど、子供っぽいと世間から思われているジャンルから離れるときに卒業/卒業式という言葉を安易に使うと、好きな人たちから顰蹙を買ってしまう可能性が大。まだ好きでいる人たちに対して、「君たちはまだ子供っぽいことにハマってるんだね」と言っているようなものだからね。

例えば、長年一緒にファンを続けていた人に対して、「俺/私はもうこれから卒業するよ、次のイベントが卒業式だ」なんて言い方をすると、相手は裏切られたような気分になるんじゃないかな。「これまでの友人関係は一体何だったんだ」と信頼関係そのものが失われてしまう恐れもあるし、あなた自身の評価が下がってしまうこともあり得るよね。

卒業とは、すべてやり切った時に使う

繰り返しになるけど、本来の「卒業」とは「やるべきことをすべてやり終えたので次のステップに踏み出す段階に至った」という意味であって、卒業式はそれを確認するための儀式。にもかかわらず、単に興味を失った、飽きただけなのに、安易に「卒業する」という言葉を使ってしまうことが実に多いのが問題かも。

例えば、プロのミュージシャンを目指して頑張っていたのにうまく行かず、音楽を諦めて就職することにしたときに「もう音楽からは卒業するよ」「次のライブが俺にとっての卒業式だ」なんて言い方をしたら、音楽仲間から「それは卒業じゃなくて単なる断念だろう」と突っ込まれかねない状況。

これは、ゲームやマンガといった「子供っぽい」と言われやすいジャンルでも同様。これらのジャンルでは次々と新しい作品が登場し、名作も生まれ、どんどん進化している。そんな状況で、ファンとして「やるべきことをやったので卒業する」なんてことは起こらないはず。

単に本人が飽きただけなのに、「もうこのジャンルからは卒業して、今度ネットでぜんぶ売り払って卒業式をするよ」と言ったら、ファンからは「それは卒業式じゃなくて、単についていけなくなって挫折しただけだろ」と言われてしまうだけ。

造語としての卒業式は使いやすい一方で、安易に使うとちょっとイタいことになりかねないのでご注意を。

「卒業式ぶり」という表現

派生した形で卒業式を造語として使用する例で、とくに多いのが「卒業式ぶり」かも。同窓会とか、ふとしたきっかけで同級生と久しぶりに会ったときに、「久しぶり!会うの卒業式ぶりだね」なんて使い方をするよね。

意味は簡単。「卒業式で最後に会ってから、会うの初めてだよね」って意味で、誰にでも通じるんだけれども、「卒業式ぶり」という表現そのものはかなり新しい造語と言えるんじゃないかな。

もともとは「卒業式以来」

もともとは「卒業式以来」という表現が使われていて、そう言われると「確かにその通りだな」と納得する人も多いはず。本来「~ぶり」は、「会うの3年ぶりだね」「久しぶりだね」といった時間の経過を意味する言葉と共に使われるべきもの。

例えば、離婚した元夫婦が再会したときに「離婚ぶりだね」って言ったら変だよね?

とは言え、全く新しい造語というわけではなく、「会うの、あの時ぶりだな」など、以前から使われている例も。「卒業式ぶり」の場合は、具体的なイベントに対して「ぶり」がつけられていること、使われる機会が多いことから、新しい造語の印象が強くなっているみたい。

この表現に対して、「日本語の乱れだ」と眉をひそめる人もいるようだけど、誰でも意味はわかるし、久しぶりに会った驚きや喜びをうまく表現できているので、これからもっと普及するんじゃないかな?

「○年越しの卒業式」という表現は正しくない?

震災以来の卒業式

もうひとつ、近年見かける機会が増えた表現は「○年越しの卒業式」。これは、東日本大震災以後によく見られるようになった気がする。あの恐ろしい災害によって、被災地の学校では卒業式ができなかった所も多く、その後復興が進む中、数年後になって当時の卒業生を集めて、卒業式の代わりになる式典を開催されたことがニュースになったよね。

そこでは「震災以来、○年越しの卒業式が開催」といった表現がしばしば使われ、見たことがある人も多いのでは?

ただし、この表現も本来は正しいとは言えないらしい。「○年越し」という表現だと、卒業できない状態が長く続いているような感じ。

~年越しは正しい表現ではない

例えば、「3年越しの愛が実った」という表現では、3年ずっと好きな人にアプローチし続けてきて、長らく実現できなかったのがようやく実現したという意味になるけど、「○年越しの卒業式」の場合、卒業はちゃんと実現しているわけだから、ちょっと変な表現になっちゃうんだって。

だから、こうしたケースでは「○年ぶりの卒業式」という表現のほうが良いみたい。一度行われた卒業式を数年経ってからまた開催するようにニュアンスもあるけど、一方で「改めて卒業生の立場に戻って卒業式を行う」という意味にもなるので、「○年越し」よりは適切ってことになるらしい。

こうして見ても、卒業/卒業式にはいろいろな形での表現があるんだと感心させられるよね。

おそらく、これからも続々と新しい造語が生まれては消え、あるいは定着するはず!

学校関連の造語について詳しく知るには、「造語症の方向けの学校の一覧~専門学校や留学などの多彩な選択肢や授業料についても」をどうぞ。

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